チベット問題の早期解決と人権の尊重を求めるSFTJapanの声明

2009年3月7日


中華人民共和国国家主席
胡錦濤殿
中華人民共和国駐日本大使
崔天凱殿

Students for a Free Tibet Japan(SFT Japan)
代表 ツェリン・ドルジェ

チベット民族蜂起50年を迎え、

チベット問題の早期解決と人権の尊重を求めるSFTJapanの声明

 1959年3月10日、チベットの首都ラサで、中国共産党の侵略に抵抗する数万の民衆が立ち上がり、人民解放軍と対峙しました。ダライ・ラマ14世が亡命を余儀なくされ、人民解放軍によって8万人以上の死者が出た「あの日」から、事態はまったく好転しないまま、今年2009年、実に50年が経ちます。

 徒歩で山を越えた者は異郷で病や貧困や劣悪な環境に耐え、故郷にとどまった者は民族の誇りと自由を踏みにじられ、すべての地で、あらゆるチベット人が苦難の半世紀を送ってきました。チベットではこの50年間に、120万人が犠牲になり、6000の仏教寺院が破壊され、取り返しのつかないほど多くの、有形無形のものを失いました。

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 昨年3月10日、チベット本土で、思想教育の強制に抗議する僧侶たちの意思表示に中国当局は力による弾圧で応じ、14日にはラサの民衆に対して武装警察が発砲する流血の事態になりました。ウ・ツァン、カム、アムドのチベット全土で広がった抗議活動は、世界中の非難を無視する形で当局によって武力制圧され、多くの死傷者と、新たな憎しみを生みました。その結果、「人権状況の改善と促進」を公約に誘致された北京オリンピックの聖火リレーは、世界各地でチベット問題への批判にさらされることになったのです。

 北京オリンピックを、中国はいま「大成功」と自画自賛しています。しかし、あの『平和の祭典』の陰で、多くの血が流れ、脅され、発言を封じられ、押さえつけられたことをチベット人は決して忘れないでしょう。

 恐怖と抑圧は今も変わっていません。
 パンチェン・ラマ11世、ゲンドゥン・チューキ・ニマ少年は、1995年5月、ダライ・ラマ法王に正式に認定された3日後に、両親とともに中国当局に連行され、今も行方不明のままで、今年20歳を迎えます。
わずか10日ばかり前の2月27日には、チベット・アムドのガワ地区キルティ・ゴンパで、1年で最も重要な宗教行事「モンラム」の開催を禁じられたことに抗議し、焼身自殺をはかった若い僧侶が、治安部隊に銃撃され、3発の銃弾を受けて連れ去られました。

 チベットには、信教の自由も、抗議する自由も、自ら死を選ぶ自由さえないのです!
 昨年、世界が注目する中で再開されたチベット・中国間の直接会談は、実質的な交渉に至ることなく終了しました。チベット亡命政府の「独立は求めない。中華人民共和国の一部として、共和国憲法の定める民族自決権を保障してほしい」という現実的な提案は、今回も完全に無視されました。チベット民族の訴えにまったく歩み寄りをみせず、より一層の弾圧と抑圧、力による統制で抗議を封じ込める中国当局に、チベット人の失望と不信と心の傷はより大きく、深く、暗い闇に閉ざされ、事態は悪化の一途をたどっています。

 チベット人が求めているのは、「生まれた場所で、自らの良心にそってふるまい、チベット人らしく生きたい」という、シンプルでささやかな、人間としてごく当たり前の希望なのです。

 チベット人が求めているのは、漢民族の排除ではありません。漢民族とチベット民族が、同じ社会を構成する存在として平和に共存し、対等に尊敬しあい、協力し合う関係を築くことなのです。

 Students for a Free Tibet Japanは、特定の個人や関係者のみの利益や境遇改善を求めているのではありません。父母の文化を継承するチベット人として、チベット民族の将来を思い、チベット全体の状況改善のため、以下の事項が速やかに実現されるよう求めます。中国の駐日本大使におかれては、世界的な世論の潮流を、中央幹部に、正確に伝えていただけるよう要請します。

  1. 現在の行政区分にかかわらず、独自の文化を共有するひとつの民族としてチベット民族が尊重されること。
  2. チベット民族が固有の言語で教育を受ける権利、国家に干渉されずに宗教活動を営む権利、伝統に合致した環境保護政策をチベット民族自身が実行する権利が保障されること。
  3. チベット独自の歴史、文化、精神がチベット人の手により継承され、民族の固有性と本質が失われないことの重要性を認め、バランスの取れた経済発展を重視すること。
  4. パンチェン・ラマ11世ゲンドゥン・チュエキ・ニマ少年、映画「ジグデル」製作者ドンドゥプ・ワンチェンさん、ラルン・ガル・ゴンパのテンジン・デレク・リンポチェ、ラブランゴンパのジグメ・グリ師、テレビ記者ランジュンさん、カンゼの尼僧サンギェ・ラモさん、リタンのルンゲェ・アダさんらをはじめとする、チベットでの行方不明者・失踪者の所在を速やかに明らかにし、即時無条件で拘束を解くとともに、身柄の安全を保障すること。
  5. 現在チベットで起きている非暴力的な抗議活動の参加者に、暴力や武力弾圧をやめ、言論の自由と心身の安全を保障すること。
  6. 2008年3月以降にチベットで起きた抗議活動と武力制圧において、実際に何が行われたかの詳細な事実関係や死傷者数などを、第三者機関によって調査し、明らかにすること。

中国大使館前でのアピールの模様(12