Students for a Free Tibet Japan
代表 ツェリン・ドルジェ
2023年3月11日
1959年3月10日、チベットの首都ラサで、ダライ・ラマ14世を人民解放軍から護ろうと一般市民が立ち上がり、ノルブリンカ宮殿を取り巻いた日から64年が経ちます。人民解放軍はノルブリンカ宮殿の群衆を砲撃し、多数の無辜の命が奪われました。チベット人がチベット人としてあり続けたいという尊厳を踏みにじり、武力と恐怖で抑圧する中国政府の誤った支配は現在も続いています。
中国政府は2023年3月5日に公表した政府活動報告に「宗教の中国化を堅持し、宗教を社会主義社会に適応させる」と明記し、信仰よりも中国共産党への忠誠を優先させる宗教弾圧を一層強める方針を示しました。これは、差別や圧政や紛争の長い歴史から人類が時間をかけて勝ち取った、人権が自由と正義と平和の基礎であるという世界の共通理念から著しく逸脱した、人類の良心を蹂躙する蛮行です。
チベットでは、自宅から通学できる村落の学校が次々に閉鎖され、子どもたちは家族から引き離され、寄宿学校で集団教育を強制されています。中国語と「愛国」思想を中心とする植民地的な教育を強要され、言語や文化を学ぶ機会を奪われています。国連人権理事会の特別報告者は23年2月6日の報告書で、寄宿学校を強制される子どもたちは未就学児から高校生まで100万人に上り、文化的、宗教的、言語的に漢民族との同化を強制されているとして警鐘を鳴らしました。報告書は、子どもたちが両親や祖父母とチベット語で意思疎通できず、アイデンティティー喪失につながっていると指摘しています。民族に対する文化的ジェノサイドを許すことはできません。
中国政府は治安維持の名目で、チベット人の行動を制限し、ソーシャルメディアを監視し、閉鎖的な個人間のグループチャットへの書き込みまでも摘発対象としています。2020年の新型コロナウイルスのパンデミック以降はさらに統制を強め、DNA採取や眼球光彩スキャンなど大量の個人データを収集する一方、情報は遮断され、非人道的なロックダウンと解除後の医療崩壊での死者数も明らかになっていません。
わたしたちは中国政府に対し、チベットにおける誤った政策と民族弾圧を即時に中止し、チベット亡命政府との対話を再開し、問題の根本的解決を図るよう強く求めます。
自国第一主義が蔓延し、ロシアのウクライナ武力侵攻に終わりが見えず、世界大戦の教訓から構築された国際協調の枠組みが揺らいでいる現在、チベット人の非暴力主義、生きとし生けるものすべての幸せを願う慈悲の思想は、地球規模でより一層の重要性を増しています。チベットの正義に殉じた多くの人々に心からの敬意と追悼を捧げ、人間ひとりひとりを尊重するチベットの闘いが必ず勝利し、世界平和に与することを確信します。