チベット民族蜂起から66年を迎え チベット問題の根本的解決と人権弾圧の即時停止を求める

Students for a Free Tibet Japan
代表 Tsering Dorjee
2025年3月9日

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 明日2025年3月10日は、チベットの都ラサで中国共産党軍の弾圧に対しチベットの一般市民が蜂起した1959年3月10日から66年、1987年からラサで続いたチベット人の抗議活動が武力で封じられ戒厳令が敷かれた1989年3月5日から36年、北京夏季五輪を控え抑圧を強める共産党政府に対しウツァン、カム、アムドのチベット全域で市民の抗議が広がった2008年3月14日から17年にあたります。チベットの現代史に繰り返された流血の悲劇に対し、私たちは今日、正義に殉じて失われた命に深い追悼と敬意を表し、現在もなお中国共産党の支配下で苦しむ人々に連帯し、チベットで続く人権弾圧と誤った政策のすべてを一刻の猶予もなく停止するよう訴えます。

 2月21日、アムド(中国行政区=四川省アバ州紅原)の男性、ツェリン服役囚(Tsongon TseringまたはTsowoe Tsering/搓俄泽让)の刑期が8カ月延長され、計16カ月の禁錮刑となったと伝わりました。ツェリン氏は2024年10月15日、素顔と実名を公開してWeiboに中国語で動画を投稿し、黄河源流域で無秩序な採石が横行し河川の水位が下がり、環境と生態系が破壊されていることを告発し、翌16日に逮捕されました。Voice of Tibetによれば「社会秩序を乱した罪」に問われ、これを認めなかったため刑期が延長されたとされます。2024年2月にはカムのデルゲ(中国行政区=チベット自治区と四川省の省境)で水力発電ダム建設に伴う強制立ち退き命令の撤回を求め、ひざまずいて懇願する地元住民が多数拘束されたばかりです。このケースは結果として、対外的に「チベットの自然を保護している」と宣伝する中国共産党政府の主張は真っ赤な嘘であること、チベットに言論の自由は存在しないことの明らかな証拠となりました。
 2024年7月には、アムドのゴロク(中国行政区=青海省果洛州)で30年にわたり地元の教育振興に寄与したジグメ・ギャルツェン職業学校に閉鎖命令が出されました。チベット人、モンゴル人、漢人など民族の区別なく生徒を受け入れ、遊牧民に無償で学びの機会を提供してきた1994年設立の学校を強制的につぶす中国共産党政府の決定は、「チベット人への教育を重視している」という対外的な宣伝とは真逆の行動でしかありません。

 チベットの人権状況に対する国際社会の視線は厳しさを増しています。国際人権団体フリーダム・ハウス(本部・米国)が2024年2月に発表した「Freedom in the World(世界の自由度報告書)」で、チベットは下から2番目のワースト2位、自由度の得点は「0」とされました。同4月にアムネスティ・インターナショナル(本部・英国)が公表した「2023年人権報告書」でもチベットの人権状況は「悪化の一途をたどっている」と指摘されました。政府と異なる意見をもつ知識人への迫害、「貧困緩和」の名目で遊牧地区から追放し定住を強制し、低賃金の工場労働に送り込んでいることなどが基本的人権の侵害として挙げられました。
 世界的人権NGOヒューマン・ライツ・ウオッチ(本部・米国)は24年5月、チベットの農民や遊牧民に対する中国共産党政府による組織的な移住の強制はチベット人自身が望んだものではないと指摘。同10月に公表された日本に関するレポートでは、チベット出身者を含む中国政府に批判的な中国国籍者に対し、行動に圧力をかけ、実家の家族を脅迫するなど、「国境を越えた人権弾圧」が行われていると非難しています。
 中国を対象国とした国連人権理事会のUPR(普遍的・定期的レビュー)=2024年1~2月=では、EU、米国、カナダ、日本などがチベット問題について言及しました。米国とカナダは「チベットの言語と文化の保護」を分科会でテーマとし、チベット人の子どもたちを未就学年齢から大規模な寄宿制学校に入らせて中国語や中国文化を強制する植民地主義的な集団教育について懸念を表明しています。

 チベットの推計100万人もの幼い子どもが家族から引き離され、寄宿学校での集団生活を強制され、使用する言語を中国語に置き換えられ、チベット語が選択言語の一つにされる教育システムは、チベット人から母語を奪い、アイデンティティーを消滅させようとする文化的虐殺にほかなりません。人類が過去の歴史で犯した過ちを、21世紀の現代に存在する中国共産党は、なぜ繰り返そうとするのでしょうか。

 武力で一方的に領土を拡張しようとする横暴な試みで人命がもてあそばれ、中国共産党政府をはじめとする強力国で自国主義や強権主義、排外主義が強まり、世界秩序が崩壊寸前にある現在、チベット人が受け継いできた文化と思想、66年にわたり絶えることのない非暴力の闘いこそが輝きを増しています。中国共産党の苛烈な弾圧、暴力や拷問での恐怖による支配、経済的な圧力を受け続けるにもかかわらず、中国共産党はチベット人の抵抗を封じることができていません。チベットのチベット人は、行動や振る舞い、文化的抵抗や非協力の姿勢などを通じて、非暴力で中国共産党の支配に立ち向かい続け、これからも決して屈することはありません。
 私たち世界中のチベット人とチベット支援者は、チベットのチベット人が持ち続ける未来への希望、弾圧をかいくぐるさまざまな方法を見いだす勇敢な抵抗をたたえ、心をひとつにして、3月10日を機に声を上げます。

  • 中国共産党はチベットで言論や意見表明を理由に不当に拘束したすべての人を速やかに釈放せよ。
  • 中国共産党は植民地主義的な寄宿制学校をただちに廃止し、子どもたちへの母語教育を保障せよ。
  • 中国共産党はチベットでの過開発と自然環境破壊を直ちにやめよ。
  • 中国共産党はチベットの宗教の自由を保障し、思想教育や転生者認定への介入を一切やめよ。
  • 中国共産党はチベット中央政権との対話を速やかに再開し、チベット問題を根本から解決せよ。

以上