G7共同要請:チベットの宗教的自由を守るための緊急行動の要請

日本 内閣総理大臣 石破茂殿
カナダ首相 マーク・カーニー閣下
フランス大統領 エマニュエル・マクロン閣下
ドイツ首相 フリードリヒ・メルツ閣下
イタリア首相 ジョルジャ・メローニ閣下
イギリス首相 キア・スターマー閣下
アメリカ大統領 ドナルド・トランプ閣下
欧州連合(EU) ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長
アントニオ・コスタ欧州理事会常任議長
G7(先進7カ国)閣僚各位

2025年6月3日

チベットの宗教的自由を守るための緊急行動の要請

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私たちは147団体以上で組織されるチベットにかかわる人権擁護団体のネットワークであり、2025年6月15~17日にカナダで開催される第51回G7(主要7カ国)首脳会議(サミット)を前に、本日、書簡を差し上げます。私たちは、G7各国政府がチベットで続く人権侵害に深い関心を寄せていることを歓迎すると同時に、チベット人の民族的アイデンティティと宗教を文化的に抹殺しつつある中国共産党政府の行為の増長を非難するための更なる共同行動を強く求めます。

そのなかでも最も憂慮すべき中国共産党の行為は、チベット仏教の伝統的な化身ラマ(この世の衆生を導くために仏や過去の偉大な仏道修行者が化身、応身として現世に現れた存在)、特にダライ・ラマ法王14世を後継する転生者認定について操作、管理し、中国共産党が意のままに操ることができる候補者を後任に据えようとしていることです。そのために中国共産党は、(仏教的概念として人知を超えた因果律である)輪廻転生と転生者認定を規定する法律を策定し、中国共産党が任命したパンチェン・ラマであるギェンツェン・ノルブを積極的に持ち上げている。一方、チベットの伝統的な選定に則ってパンチェン・ラマ11世と認定されたゲンドゥン・チューキ・ニマは行方不明となったままであり、健康状態や所在の情報は一切明らかにされていない。*1

ダライ・ラマ法王14世は、自身の次代の転生者認定に関する唯一の権限は自分自身とチベット人にある、と一貫して明確に主張しており、中国共産党政府のいかなる関与も明確に排除している。ダライ・ラマ14世は、化身ラマとしての「ダライ・ラマ」継承をチベット人が望む場合、転生者は中華人民共和国の域外の自由主義国家に生まれること、また、そしてチベット人と国際社会は、北京の中国共産党政府が政治的に利用するための傀儡として擁立する候補者を拒否することを明言している。*2

ダライ・ラマ法王14世は2025年7月に満90歳を迎える。高齢となるに伴い、国際社会と各国政府は、来たるべき事態を予測し、より十分な準備と多国間協調を展開することがますます重要になっている。新たに発行された報告書「チベット人の宗教的権利保障:中国の輪廻転生政策への対応(Protecting Tibetan Religious Rights: Addressing China’s Reincarnation Policies)」は、中国共産党政府の宗教面への干渉に関する憂慮すべき数々の権利侵害に焦点を当て、国際的な人権基準の視野から北京政府の行動を厳密に分析し、各国政府に対する緊急提言をまとめている。*3

中国政府はチベット仏教を厳しく弾圧、抑制している。僧侶や尼僧がその信仰を守る際に極端な弾圧を受けるばかりでなく、一般の幼い子どもたちさえも政府の抑圧を免れることはできない。前時代的な、植民地主義的な全寮制教育制度は広範囲に施行され、推定約100万人のチベット人の子どもたちが家族から強制的に引き離され、自らの文化に基づく宗教を学び実践する権利を侵害されている。*4

70年以上にわたり中国共産党に占領され支配下に置かれているチベットは、20世紀の植民地主義の最後の名残のひとつであり、G7先進諸国は基本的人権と自由の保障のため、これに対抗するべきである。米国を本部とする国際人権NGOフリーダムハウスは2025年2月、チベットの自由度を100点満点で0点とし、北朝鮮やスーダンよりも低く評価した。

これらの指摘および国際人権規約に基づき、私たちは、ダライ・ラマの次世代の転生者認定を含め、チベット仏教の指導者の選出と任命に対する中国共産党政府の干渉をやめさせるための強力な共同声明を採択し、チベットにおける人権侵害をなくすよう公的に対処することを求めます。

私たちは、チベット人のアイデンティティと文化の存亡の危機に際し、G7サミットという重要な多国間協議の機会を活用することを望みます。

署名
ツェリン・ドルジェ(Students for a Free Tibet- Japan)
※日本の組織代表以外の署名者の転記は省略

注記:この日本語訳は、共同要望書「Re: Urgent action to defend Tibetan religious freedoms」の参考としてStudents for a Free Tibet- Japan により作成された試訳です。英語原文の直訳ではなく、日本語表現に関して補足を加えている部分があります。英文版が正本であり、英原文との差異については英文版が優先されます。