中国当局は何を隠そうとしているのか?

チベット取材団の受け入れ拒否に抗議する声明

2018年6月10日

中華人民共和国  国家主席 習 近平 殿
中華人民共和国駐日本国特命全権大使 程 永華 殿

 59年前、1959年にダライ・ラマ法王14世がチベットの首都、ラサを逃れて以来、チベット本土は「竹のベール」に包まれました。1960年代の文革のさなか、1980年代後半の戒厳令の時代、そして2008年の騒乱で何が起きたのか、どれだけの人が犠牲になったのか、日本をはじめとする外国の人々にはすぐに情報が伝わりませんでした。2008年にデプン寺の僧侶が決起したこと、そしてラモチェの周辺で衝突があったことを日本に住む私たちが知ったのは、中国当局によってラサ市全域で捜索が行われ、多くのチベット人が連行された後のことでした。中国政府は真実を覆い隠すことで、愚かなチベット政策を正当化したのです。

 そして今年(2018年)6月、中国当局はその愚行を繰り返そうとしています。産経新聞(*1)や朝日新聞(*2)、読売新聞(*3)などの報道によれば、日本の報道各社17社による取材団が6月17日から25日までチベット自治区を訪問予定でしたが、中国政府がその一員である記者へのビザ発給を拒否したため、一行の取材が中止されました。
 観光や資源開発によってチベット人の所得向上をはかるという中国当局の政策を私たちは注意深く見つめています。日本の報道各社による取材は、チベットの状況を検証するまたとない機会になるはずでした。中国当局はいったい何を隠そうとしているのでしょうか?
 民主主義社会に生きる私たちには「知る権利」があります。それを代表して行使しようとした日本の報道各社による取材を中止させたのは、その権利の否定であり、明らかな民主主義への挑戦です。

 スチューデンツ・フォー・フリーチベット・ジャパン(SFT Japan)は、中国当局に対して毅然とした対応をとった日本記者クラブの判断を支持するとともに、中国政府が日本記者クラブ取材団全員の参加を受け入れ、「言論・表現の自由」の原則に基づいてチベット自治区で自由に取材することを求めます。

Students for a Free Tibet Japan (SFT Japan)
代表 Tsering Dorjee(ツェリン・ドルジェ)

*1 : 「中国、チベット取材団への本紙記者参加を拒否 日本記者クラブは派遣を中止」6月9日付産経新聞
https://www.sankei.com/world/news/180608/wor1806080023-n2.html

*2 : 「チベットへ記者団派遣を中止 産経記者のビザ発給されず」6月9日付朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASL6862P7L68UTIL042.html

*3 : 「産経記者ビザ下りず、チベット取材団派遣中止」6月9日付読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/national/20180609-OYT1T50027.html