2018年3月10日
中華人民共和国 国家主席 習 近平 殿
中華人民共和国駐日本国特命全権大使 程 永華 殿
Students for a Free Tibet Japan (SFT Japan)
代表 Tsering Dorjee (ツェリン・ドルジェ)
チベットの民族平和蜂起から59年にあたり一刻も早い根本的なチベット問題解決を求めます

私たちはいま、10年前の今日、59年前の今日を思い起こし、ここに立っています。
10年前の今日。
中国が北京オリンピック開催を前に沸き立っていたころ、チベットの首都ラサでは、デプン寺院の僧侶たちが、オリンピック憲章が掲げる「人間の尊厳保持と平和な社会」を求めて市の中心へ歩き始め、武装警察に弾圧されました。その弾圧への抗議、もう耐えられないという怒りが、チベットの学生、労働者、女性、老人――ありとあらゆる人々に、そしてウ・ツァン、カム、アムドの全域に広がりました。武器を持たずただ街頭で自由を訴えた人たちは、人民のためのはずの軍隊と警察に銃で撃たれ、多数が殺され、10年経ったいまも、多くが行方不明のままとなっています。
あの日から、チベットの人権状況は悪化の一途を辿りました。
米国のNGOフリーダム・ハウスの発表する世界人権状況白書は、3年連続で、チベットの自由度をシリアに次ぐ世界ワースト2位と位置づけています。出版や集会やデモといったあらゆる意見表明の自由を奪われたチベットで、2009年以降、外部に伝わるだけで160人以上が、自らの身体に火を放つという極限的な手段でチベットの正義を訴えました。つい3日前の3月7日、アムド地方ンガバで40代のツェコ・トゥチャさんが抗議の焼身で亡くなりました。非暴力と捨身(しゃしん)の精神に深く敬意と哀悼を表すと同時に、現在進行形で続くこの悲劇が、これ以上1人たりとも増えてはならない、と申し上げます。悲劇の連鎖の原因は、すべて中国共産党の政策の誤りにあるのです。
私たちはまた、チベット語教育の重要性を訴えたブロガー、タシ・ワンチュクさんが「国家分裂扇動罪」とされたことに強い懸念を表明し、無実と即時釈放を訴えます。タシ・ワンチュクさんは2016年、ニューヨーク・タイムズの取材に応じ「チベット人はバイリンガル教育の機会を保障されるべきだ」とコメントした後に身柄拘束され、2年間以上、家族の面会も弁護士の接触も許されませんでした。裁判が今年1月4日に開かれたと伝えられますが、判決内容はいまだ明らかになっておらず、最悪で懲役15年の刑を受ける可能性が指摘されています。中国の憲法は少数民族が自民族の言語を習得する権利を保障しており、タシ・ワンチュクさんの発言は何一つ中国の法に反していないにもかかわらずです。自らの憲法さえねじ曲げて国民に無実の罪を着せる国家など、あってよいものでしょうか。中国共産党には国を統治する資格などない、と申し上げます。
59年前の今日。
チベットの首都ラサでは民衆が蜂起し、ダライ・ラマ法王は亡命を余儀なくされました。私たちは今日これまでにチベットの正義と自由のために立ち上がり、命を落とした多くの人々に心からの追悼を捧げ、弾圧に屈さず闘い続けるチベットの人々に深い共感と連帯の意を表すとともに、59年にわたり続くチベット問題の1日も早い根本的解決を求めます。
習近平国家主席は2月25日、中国の国家主席の任期を撤廃する法案を発表しました。任期撤廃とは、中国が、文化大革命を再び引き起こし得る国家体制に戻る、ということにほかなりません。紛争と流血の愚を何度も犯した人類が、民主主義と協調の理念で世界平和を維持するために一段ずつ築き上げた階段を、中国共産党は自ら背を向けて下っていくかのようです。そこに人類の目指すべき未来は存在しないことを強く申し上げます。
中国共産党の権力と武力がどれだけ圧倒的であろうと、理のない不当な弾圧に、チベットの平和と非暴力、寛容と不屈の精神が折れることはありません。なぜなら、チベット人の希求する自由と平和は、ただチベットさえ良ければという利己的な幸福ではなく、生きとし生けるものすべてが幸せになる普遍的な平等と自由と世界平和の追求であり、すなわち正義の闘いであるからです。
SFT Japan(スチューデンツ・フォー・フリーチベット・ジャパン)は、中国共産党政府に対し、チベットにおいて59年間続く誤った政策を速やかに停止するよう求めます。チベットの文化と宗教を尊重し、伝統の継承と言語教育を保障し、チベット高原の乱開発と生態系破壊をやめ、チベットの代表であるチベット中央政権(亡命政府)及びダライ・ラマ法王との対話を再開し、一刻も早いチベット問題の根本的な解決をはかるよう求めます。
Students for a Free Tibet Japan
Tsering Dorjee