2020年3月10日
中華人民共和国 国家主席 習 近平 殿
中華人民共和国駐日本国特命全権大使 孔 鉉佑 殿
Students for a Free Tibet Japan (SFT Japan)
代表 Tsering Dorjee (ツェリン・ドルジェ)
チベット民族蜂起から61年を迎えての声明
1959年3月10日にチベットの首都ラサで中国共産党の抑圧に耐えかねたチベットの市民が平和蜂起して61年を迎え、また、2008年3月に自由を求めるチベット全域の人々が非暴力手段で共産党政府への抗議に立ち上がって12年となった。この61年間、チベット人はチベット人として生きる基本的人権と尊厳を踏みにじられ、言語や宗教など民族固有の文化と価値観とアイデンティティを奪われ続けた。さらに直近の12年間は、経済発展や情報技術開発の名目下に社会的抑圧が強められ、2009年以降に少なくとも163人(うち中国共産党統治下のチベットエリア155人)が自らを燈明として世界世論に訴えるまでに追い詰められるほど、状況は悪化している。
チベットの苦難の歴史の象徴である3月10日に、我々は、今なお獄中にあるタシ・ワンチュク(Tashi Wangchuk)さんの不当な処遇について訴える。今年35歳になるタシさんは2015年、チベット人にはチベット語を学びチベット語を使う権利があることを確認するため、中国の国営メディアや裁判所に足を運び、米ニューヨーク・タイムズの取材に応じた。すべては中国の憲法になんら反することのない行動である。しかし、タシさんは2016年1月、法的な根拠なく身柄拘束され、約2年間行方不明となった後、2018年5月に「国家分裂扇動罪」により懲役5年の実刑判決を受けた。ここには二つの重要な真実が示されている。チベット人にとって自らの固有の言語を読み書きし、チベット人としての教育を受けることがどれだけ大切であるかということ。同時に、国家の憲法や法律をほしいままに破り、不法かつ不当な振る舞いをしているのは為政者の中国共産党政府だ、ということである。
現在、世界は新種のウイルスによる感染症の脅威に晒されている。新型のウイルス(COVID-19)は2019年12月までにまず中国国内で確認され、約3カ月で世界101の国と地域に広がった。人類が学ぶべきは、疫病の脅威の前に人間は弱く小さな存在で、すべての命に貴賤はないという自明の理であり、国際協調の大切さである。にも関わらず、中国共産党政府が取った初期対応は、内部告発し人類の危機に警鐘を鳴らした職業倫理と正義感に溢れた青年医師に法的制裁を加え死に至らしめるといった、事実の隠蔽と情報の遮断、人命のあからさまな軽視であった。国民の生命を軽んじ体制の維持を優先する本末転倒な支配体制が疫病の世界的蔓延につながった現状は、中国共産党政治が100%誤っていることを端的に表しているといえよう。
我々Students for a Free Tibet Japanは、これまでの61年間にわたりチベットの自由のために闘い苦難を味わったすべてのチベット人に深く尊敬と哀悼の意を示すと同時に、抑圧下のチベットで希望を失わず強靱な精神で日々を生き延びるすべての人々に心からの共感と連帯を訴える。中国共産党政府に対し、一刻一秒も猶予なく人権弾圧を停止するとともに、チベット亡命政権との対話を再開し、ダライ・ラマ法王14世が提唱する中道路線を受け入れ、チベット問題の根本的な解決を図るよう強く求める。