「約束は果たされていない」北京冬季五輪開催にあたって

2022年2月4日
Students for a Free Tibet Japan
代表 ツェリン・ドルジェ

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 衆議院は2月1日の本会議で、「新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議」を賛成多数で採択しました。ウイグルだけでなく、チベットや香港、内モンゴルにおける中国政府の横暴を「力による現状変更を国際社会に対する脅威」と指摘したことは画期的で、高く評価されるべき決議です。採択に賛同された各議員に感謝するとともに、この決議の趣旨に沿ってチベットにおける深刻な人権侵害の状況が改善されるよう日本政府が中国に対して促すことを期待します。

 チベット人は中国政府の言う「少数民族」のひとつではありません。独自の文化・宗教を持ち、独立した領土に住む民です。
 チベット本土では、中国政府によるチベット人の人権抑圧、文化・宗教への攻撃がいまも続いています。2009年に大震災に見舞われたチベット東部のダゴでは、地元の僧侶など十数人が当局に拘束される事件が起きました。僧侶らは、震災犠牲者の鎮魂のために町の中心部に建てられた仏塔とマニ車が、12月に中国当局によって取り壊されたことや、11月には僧院が運営する学校が強制的に閉鎖されたことに抗議していました。拘束された人々が拷問を受けているとの情報もあります。
 このように権力や暴力によって口を封じることはあってはなりませんが、チベット本土では中国政府による暴力がいまだに横行し、改善の兆しがありません。

 2008年夏季五輪の北京誘致にあたり、中国政府は「人権状況の改善」を公約しました。しかし現実はそれに逆行しています。2008年の五輪開催直前には多くのチベット人が拘束、連行され、チベットは「沈黙」させられました。チベットだけでなく、ウイグル、内モンゴル、香港など統治下にある人々を暴力で屈服させ、批判的な外国政府や企業に対しては経済力を盾に黙らせてきたのが、この10年あまりの中国政府の姿勢でした。
 そしてきょう2022年2月4日、北京で2度目の五輪が開会します。五輪は政治とは無縁のスポーツの祭典ですが、中国政府は五輪開催地の特権を利用してIOCを懐柔し、チベット人などに対する人権抑圧に目をつぶるよう、参加各国に政治的な圧力をかけていると言わざるを得ません。

 中国政府に五輪開催の資格はないのです。私たちは決して黙らず、目もつぶりません。中国政府に対しては約束通りの人権状況の改善、チベット文化・宗教の尊重を、IOCには中国政府に毅然とした態度を取ることを要求します。