2008年3月8日
中華人民共和国国家主席
胡錦濤殿
中華人民共和国駐日本大使
崔天凱殿
SFT(Students for a Free Tibet)Japan
(スチューデンツ・フォー・フリー・チベット日本支部)
代表 ツェリン・ドルジェ
要請書
チベットは1959年、中国によって侵略され、10万を越えるチベット人が亡命を余儀なくされました。状況は49年たった現在も変わっていません。中国の侵略によって、120万人ものチベット人が犠牲になり、6000ものチベット仏教寺院が破壊されました。そして、現在も中国共産党政府による弾圧と投獄に苦しんでいます。
チベット亡命政府は中国政府との対話が実現する機会を信じ、1974年、チベット問題解決のための基本方針「中道的アプローチ」をまとめました。そして1979年に北京中国政府との直接対話が実現しました。会談の席で、当時の鄧小平副総理は「独立を除くすべての問題は交渉によって解決可能である」と述べました。以来、チベット亡命政府は、中道的アプローチを一貫して誠実に実行してきました。
2002年にチベット・中国間での直接交渉が再開されて以来、2007年までチベット代表団と中華人民共和国の高官らの間で6回の会談が行われました。ダライ・ラマ法王は、真摯な気持ちで中国政府と「中道的アプローチ(Middle Way Approach)」に基づいて対話を求め続けています。しかし、対話には進展がなく、最近になって中国政府は、チベット問題について「存在すらしていない」と発言しています。専門家の中には、中国政府はダライ・ラマ14世が亡くなるまでの時間稼ぎをしているだけで、本当の意味での対話は望んでいないという分析もあります。
今年2008年8月には、北京で夏季オリンピックが開催されます。中国政府は北京へのオリンピック誘致にあたり、IOC(国際オリンピック委員会)に対して「深刻な大気汚染など環境問題の改善」や「完全な報道の自由を含む国内の人権問題の改善と促進」などを公約しました。中国国内でチベットを含む民族文化が破壊と消滅の危機にあること、言論や思想の自由が保障されず民主活動家らが不当に拘束されたり生命の危険にさらされていることは国際人権団体などによりしばしば指摘されていたことです。指摘に対し中国政府は「北京での五輪開催は中国の人権改善に役立つ」などと主張して批判をかわすことさえしました。2008年8月の北京オリンピック開幕までに、人権状況に有意義かつ持続的な改善がみられるかどうか、チベットサポートグループをはじめとする関係団体は高い関心を持って注目してきたのです。
五輪誘致から7年。中国政府は「環境保護」に名を借り、2005年から5年計画でチベット高原の遊牧民を10万人規模で大量強制移住させて、チベット高原特有の生活様式や文化を破壊しています 。つい数週間前の2008年2月21日にも、青海省でチベット暦新年15日の、チベット仏教の1年最大の宗教行事モンラムを祝っていた民衆に対し当局が催涙弾で弾圧、僧侶を含む200人以上が一時拘束され暴行を受けました 。今年4月25日に満19歳を迎えるパンチェン・ラマ11世、ゲンドゥン・チューキ・ニマ少年は、1995年5月、ダライ・ラマ14世による正式認定の3日後に両親とともに中国当局に連行されたまま、今も行方不明で、生死さえ明らかになっていません。
中国憲法は、少数民族のための民族的、地域的な自治区を保障しています。しかし、問題は、それが充分に実行されておらず、民族のアイデンティティや独自の文化、言語を守るという目的を果たせずにいるということです。チベット仏教の宗教文化をはじめとするチベット民族のアイデンティティ、文化、言語は、チベット人自身が一番よく知っており、チベット民族自身の手で伝統や文化を継承し伝えるのがふさわしいと考えます。外部の漢民族国家の強制的な関与よりも、互いに隣りあう存在として平和に共存し、真摯な気持ちで協力し合える関係を希望します。
SFTが求めるのは、数人のチベット人個人の状況の利益や境遇改善ではありません。父母の文化を継承するチベット人として、チベット民族のためを思う真摯な気持ちで、以下の事項の速やかな実現を求めます。駐日本大使におかれては、この世界的な世論の高まりを中央幹部に正確に伝えることを要請します。
中国政府には、IOCに対し自ら公約した人権状況の改善を、次の通り、北京オリンピック開催までに実行するよう要請します。
記
- パンチェン・ラマ11世、ゲンドゥン・チューキ・ニマ少年を一刻も早く釈放すること。
- 非暴力にもかかわらず、宗教上信仰上の発言など思想的理由で拘束されているチベット人らを速やかに釈放すること。
- チベット仏教寺院の理不尽な人数制限を撤廃し、宗教への介入や思想弾圧をやめること。
- 「チベット人民の人権と基本的自由を剥奪するあらゆる行為の停止」を求めた国連決議(1961年)や「チベットの人権及び自由の基本的権利の尊重を中国に求める」とした国連小委員会の決議(1991年)を受け入れ、実行に移すこと。
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