今年9月19日から2010年1月11日までの長期にわたって、東京・上野の森美術館で「聖地チベット ポタラ宮と天空の至宝展」の開催が予定されています。この展覧会は中国国家文物局、中国大使館の後援によるもので、既に福岡、札幌でも開催されています。
この展覧会は、中国政府がチベットの守護者であることを誇示するために開催するもので、中国政府のPR戦略の一環と見られます。ラサのポタラ宮やノルブリンカから中国政府によって「盗み出された」仏像や仏画の展示が中心であり、チベット人にとって、これはとても耐え難いことです。一方、ダライ・ラマ14世が即位した1940年以降、チベット人に襲いかかった歴史的事実にはまったく言及されておらず、チベット問題の解決を阻害するものと言わざるを得ません。
SFT Japanはこの展覧会の開催に抗議し、7月13日、上野の森美術館館長、水野政一氏に展示内容の見直しを求める要請状を送付しました。
上野の森美術館館長
水野 政一 様このたびは9月に予定されている「聖地チベット ポタラ宮と天空の至宝」展開催について、私たちの意見を申し上げたく、本状をお送りしました。
いまなお続くチベット文化破壊の当事者である中国政府の後援を受けた本展覧会の開催によって、貴美術館と他後援企業、団体の品位が汚されることを私たちは懸念しています。展覧会開催は同時にチベットの人々の人権と自決権を脅かすことにもつながります。この企画内容のままでの展覧会の開催とそれに対する協力は、チベット問題の解決に向けてとても受け入れがたく、看過することができないものです。もしこのまま実施されれば、貴美術館が人権侵害や文化の破壊といった問題を無視していることを露呈し、単なる中国政府の政治的宣伝に協力しているものと見なされかねません。
以上の懸念から、私たちは下記のとおり意見を申し上げたく存じます。
- 本展での展示物が、何世紀ものあいだダライ・ラマ法王の居城であったポタラ宮から持ち去られたものである旨の説明を入れてください
- 中国の占領により、1959年にダライ・ラマ14世がポタラ宮を去らねばならなくなったことを配慮した展示内容にすることを求めます
- 展示内容は、20世紀のチベットでの紛争の歴史についても説明を加え、1959年に中国軍が東チベットに侵攻して以来のチベット人の苦難についても配慮するべきです
もちろん、中国政府が後援するチベットに関する展覧会を実施しないことが最良の選択であることは言うまでもありません。
今日においてもチベット民族は人権の尊重を求めて平和的な抗議を行ってきております。中国政府の人権侵害に対して世界的な抗議の声が上がっているのにも関わらず、いまなお大勢のチベット人が拘束され、拷問を受け、公平な裁判によらず死刑判決を受けています。
いつかチベット人が自分たちの手に自由を取り戻したとき、チベットの人々は初めて「聖地チベット ポタラ宮と天空の至宝」で展示されたような貴重な品々を観ることができるのです。それまでは中国政府とのいかなる協力関係も、北京のプロパガンダを利するだけになるでしょうし、有害無益であると言わざるを得ません。どうか事情ご拝察の上、展示内容について再検討いただきますよう、またご返信を賜りますようお願いします。また今後益々のご発展をお祈りする次第です。
Students for a Free TIBET Japan
代表 ツェリン・ドルジェ